先天性代謝異常症について
私たちの体の中では、食べ物を有効に利用するためにいろいろな酵素や蛋白質が働いています。例えば食物を胃や腸で消化し、エネルギーに変えるためにはいくつもの酵素が作用して物質によってそれぞれ酵素を使い分けています。1つの酵素がないからと言って、他の酵素で代用する事はできません。たくさんある酵素の中で1つでも欠けていたりうまく働かないと、必要な物質が利用できなかったり余分なものがたまったりして発育や発達が障害されます。
また、酵素ではなく細胞の中でいろいろな物質を輸送する働きのある蛋白質の異常でも、余分なものがたまり細胞の機能が悪くなって発育や発達が障害される場合もあります。
これらの様に細胞の中の代謝がうまくいかなくなって起こる病気を代謝異常と言い、多くは遺伝子の異常で起こる先天性のものと考えられています。
先天性代謝異常症は、現在わかっているだけでも500以上あります。それらの中には、脂質代謝異常、糖質代謝異常、アミノ酸代謝異常、金属代謝異常などがあります。普通ではほとんどないような物質がたまることによって、神経や肝臓、腎臓、骨などの細胞の障害が起こりいろんな症状が出てくることになります。神経細胞が障害を受ける場合、多くは進行性で、発達の停止や退行などがおこります。
一部の病気では食事療法や酵素補充療法などの治療法が開始されていますがほとんどの疾患においては有効な治療法がなく対処療法に限られています。
日本では生後5~7日にすべての赤ちゃんを対象にして、一部の先天性代謝異常症の早期発見を目的としたマス・スクリーニング検査を1997年から行っています。対象は、アミノ酸代謝異常症であるフェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症と糖質代謝異常症のガラクトース血症など、早期に発見することによって治療が可能なごく一部の疾患に限られています。それらの疾患は食餌療法(特殊ミルク)などで早期に治療を開始する事によって知能や発達の遅れを回避する事ができます。
ニーマンピック病C型は蛋白質の異常によって代謝がうまくできない病気なので、先天性代謝異常症に属します。